伝統を守るために革新を。業界が3分の1の売上になる中、売上増を続ける企業「能作」

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先日カマコン式定例会の地方開催のため富山県の高岡・氷見の地を訪れました。

とても印象的な企業と出会ったので、ご紹介します。

伝統工芸の苦境

富山県高岡市に 株式会社 能作 という会社があります。高岡は元々工業の街だそうで、能作も古くから鋳造技術を用いた伝統的な鋳物を作ってきたそうです。例えば、仏具、茶道具、花器といったものです。

しかし、伝統工芸のご多分に漏れず、高岡にある同様の産業は、バブル期をピークとして、なんと3分の1ほどまで売上が減少してしまっているそうです。

そんな中、能作はずっと売上を伸ばし続けています。周りの売上が3分の1になっている市場で伸ばし続けている。とんでもないことですよね。

今回大変ありがたいことに、株式会社 能作の能作さん御本人からお話を伺う機会をいただきました。

nousaku

常識に捉われない発想

能作が生み出した製品で最も知られているのは、錫(すず)を利用した商品です。錫というのは柔らかい素材のため、通常はいくつかの原材料を混ぜて固くして鋳造するそうですが、能作ではグニャグニャと曲がることを利用した100%錫の製品を作っています。

真四角の状態のものをグッと引っ張るだけでカゴの形になります。今まま見たことがない商品でとても興味を持ちましたし、同行したメンバーの多くが思わずその場で商品を購入していました。

この商品を生み出したのが、現社長さんの能作さんで、この方の考え方や発想が面白いのです!

50140_KAGO-Square-L能作HPより

伝統技術は革新し続けなければならない

高岡という地は、1600年代始めに大阪から鋳物師を7人呼び寄せたことから始まった、400年の歴史ある工業の街だそうです。能作さんは20代後半で婿養子として能作に入社し、20年現場の職人として腕を磨き続けました。他所者だからこそ、地元の人たちが面倒を見てくれて技術を教えてくれた側面もあるといいます。

あるとき、とある展示会向けに 仏具で使う鈴を出荷することになりました。「真鍮の美しさの技術には自信があるから、このままで勝負したい」と塗装することなく出したところ、それが某大手小売り店のバイヤーの目にとまります。しかし、いくら綺麗な真鍮で良い鈴の音が出ても、世の中に鈴を買う人自体が少ないためか、なかなか売れなかったそうです。

そんなとき、売り場の人の「見た目も良いし、綺麗な音だから、風鈴にしたら良いのでは」というアドバイスから風鈴にしたところ、爆発的に売れました。大ヒット。

先程紹介した錫を使った器も同じです。普通は曲がる食器なんて使い物にならないと考えがちですが、ある人から「曲がるなら曲げて使えば良いじゃないですか」という言葉を聞いて、錫100%の商品を生み出したそうです。

鈴を塗装しなかったことも、食器を曲がるままで出すことも、今までにないやり方で当然実績もない話です。それでもユーザーや周りの人の声を聞いて実践した結果が、他にはできない実績として積み上がっています。

50601_Bell_Slim_gold能作HPより

共存共栄のあり方

元々数名だったのが今では100名に迫る社員数となった能作。サクセスストーリーを聞いているだけで心打たれますが、能作社長の地域や同業他社への考えが秀逸でした。

世に知られるにつれ、直接取引きをしたいとの申し出が数多くあるそうです。直接取引きをすれば問屋を通すコストがなくなる分、売り手は高く売り、買い手は安く買う、ことが可能になります。

しかし、能作社長は「既に買い手の方が付き合いのある問屋さんで、うちの商品の取引きルートがある場合は、全て問屋を通して買ってもらうようにしています」と言い切っていました。ネット全盛で中間コストを削減する世の中で、問屋の立場を崩さないようにしている会社なんて聞いたことがありません。

また、地域で錫を利用した商品の開発を考えている方へは、出し惜しむことなく技術を伝えるそうです。

錫は単価の高い原材料だそうで、錫ビジネスをはじめようにも少量の錫を仕入れはコスト高になりがちですが、能作は彼らを応援するために自社の大量仕入れ単価そのままで原材料を卸しているそうです。

同じ錫を用いた商品作りをしているという意味では、ライバル企業の会社です。それでも、惜しげもなく技術を伝え、原材料まで安く利用できるようにする。そうすることで、街全体の新たな産業になるよう立場を取っているのだと思います。

「自分たちが良ければ良い」という考え方の正反対の立場を取っている。このような企業姿勢があるからこそ、地域も盛り上がるのでしょう。

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能作作業場

伝統から革新へ。そして世界へ

能作は現在イタリアのミラノに直営店を持っています。海外の人からも注目を集め、順調に売り上げを伸ばしているそうですが、海外のお店を直接運営する理由は「お客様の声を集めるため」だと言い切ります。

「イタリアでは、赤ワインのグラスを置くため専用のテーブルウェアとしてのお皿の市場があります。これはワインが溢れたときに真っ白なテーブルクロスだけではクロスがすぐに汚れてしまうためです」

確かに、そんなニーズがあるなんて海外に根を下さなければ分からない・・・。海外の声を集めて、日本で海外仕様の製品を開発し、海外へ販売していく。

どこまでもお客様や周りの人の声を集めることに長けている能作らしい取り組みだと感じました。知らないだけで、能作みたいな「すごい会社」って世の中にまだまだたくさんあるのでしょうね。

またご紹介します!