山の中の荒れ果てたみかん畑を農地に変えた人に未来を感じた話

約2ヶ月も前の話を、さも先日あったことのように文章にするのが得意な菱木です。

 

日本における農業事情を考えたときに、外せない問題として中山間地域の耕作放棄地問題があります。
今回は九州で出逢った、山の合間で農業をやっている農家さんのお話です。

中山間地域というのは、字面から分かる通り、山と山に挟まれた地域のことで、平地と比べて作業効率が悪くなるため運用コストが高く、農業をするには敬遠される地域です。

とはいっても、日本の国土の7割が中山間地域なんですよ。

日本らしい風景の一つとして棚田がありますが、まさに山の傾斜面を上手く使った、昔ながらの米作りの象徴ともいえる風景です。ただし、景色は良いのですが、作業をする側は大変です。狭い通路しか取れないため、大型の農機具は入らず作業効率が悪くなります。

平地であれば一区画当たりの農地の面積も広く取れますが、中山間地域においては狭い耕作面積の単位で複数の農地を持つことになります。このように問題が多くあるため、耕作放棄地がドンドン増えているのが中山間地域です。

ちょっと情報古いですが、グラフで見るとこんな感じです。

右肩上がりで耕作放棄地が増えていってるのが分かります。

そんな問題がある中山間地域なのですが、とんでもない山の合間でアスパラガスを育てている農家さんがいらっしゃいました。

写真からでは分かりにくいかもしれませんが、山の中に急に農地が出現します。

この農地に辿り着くまで、途中20分くらい民家もないような山道を、ひたすら進むんですよ。運転しながら、

「農業をやっている人ではなく、林業をやっている人に会いに行っているのではなかろうか」

と考えてしまうレベルで山の中なんです。

ここ数年多くの農家さんと出会ってきましたが、このような場所で、専業で、かつ新規就農で農業をされている方と初めてお会いしました。

この場所で新規就農したのが上の写真の安東さんご夫妻。奥さんの実家が近い佐賀県の太良町の自然等に魅力を感じ、関西から移住して、この地域に就農したそうです。

新規就農と簡単にいっても、土地の確保が大きなネックになります。地域の農家さんの手伝いをしながら、平地で土地を探すも見つからず、そんな中で山間部の元々みかん畑だった荒れ果てた土地を借りるチャンスがあり、自ら開墾して現在の圃場を作ったそうです。

この山間での農業に希望を見出し、熊本から移住してきて安東さんご家族と一緒に働いている方もいらっしゃいました。

日本全国、山間の中山間地域をどう活用すべきか困っている地域が多くあります。前述した通り、作業効率が悪く、決してわざわざ好き好んで農場として選ぶ場所ではないと思います。

ただ、こういった場所を活用すると考えたときには、狭い面積の中で効率良く生産し、かつ高単価で販売できる作物を選ばないと、儲かりません。そういった環境で安東さんが選んだ作物がアスパラガスということでした。

もちろん、人一倍の苦労と努力がないと、普通の人が選ばない土地で成功することは難しいでしょう。

安東さんは土地の作り方や、肥料の作り方まで試行錯誤を重ね、平地で作るものに遜色ない、むしろ一般的なアスパラガスよりもクオリティの高い美味しいアスパラガスが作れるようになったそうです。

その証拠に、佐賀の食べる通信でも特集されています。

 

安東さんのアスパラガスはこちらのサイトから購入可能!

http://a-noker.com/

野菜を美味しく作ることももちろんですが、作った野菜を高く売ることも重要です。安東さんは”森のアスパラガス”とブランディングをされて、幅広い販売戦略もとっていらっしゃいます。こういった努力もまた大事なんですよね。

全国の中山間地域における活用方法のモデルケースとして、安東さんの事例はきっと展開できる気がしています。

人が見向きもしない土地でも、人がやらないことをやることで、中山間地域の耕作放棄地問題という社会問題を解決することができるかもしれない。

山の中で出逢った農家さんに、そんな未来を感じました。

 

農業現場で感じた人を雇用することの難しさ

1月前半に九州の農家関係者さん約40名くらいと約1週間かけてお会いする機会がありました。

普段知らない世界だからこその新鮮な驚きがあったので、せっかくなので興味のある方に一部共有していきます。今回は農業研修生がテーマです。

 

農業研修生とは

農業の世界では研修生と呼ばれる雇用形態があります。

新規就農希望者がいきなり農業を始めるにもノウハウがありません。先ずは農業法人と呼ばれる法人として農業経営を行っている組織体や、個人事業主の農家さんの現場等で、研修生として働きながらノウハウを獲得していくケースが多いようです。

今回お会いした個人の農家さんや、いくつかの農業法人さんでも、研修生を受け入れていらっしゃるケースがありました。

 

いきなりですが、気になる月給は、今回お話を伺ったとある法人さんですと15万円とのこと。正直、都心で働く給料と比較すると少ないのが実態ですが、自立するためのノウハウを吸収する修行期間。と思えば、悪くないかなとも思います。生活コストが安いこともあり、厳しい生活を強いられるわけではなさそうです。

とはいえ、個人的にはノウハウ自体を簡単にハックできて、すぐに普通以上の収入が確保できる世界を作りたいなと考えています。その話は長くなりそうなので、また別の機会に。

 

外国人研修生の移り変わり

今回、驚きだったのが外国人研修生に関してです。

以前は中国人の研修生が多く来ていたそうですが、今では中国人の研修生が寄り付かなくなっているそうで、東南アジア系の研修生が多いそうです。

なぜ中国人研修生が減少しているのか。その理由を尋ねてみたところ

「農業はキツイという話が恐らく中国人コミュニティの中で出回っているみたい。それで中国人が工場系の仕事にシフトしてしまっていて雇用ができない。」

からだそうです。

真偽のほどは分かりませんし、今回お会いした中で中国人の研修生を受け入れている先もありましたので、全く中国人の研修生が来なくなった話ではないのでしょう。

 

ただ、

”外国人が出稼ぎにいきたくない職場環境として農業が認知されている”

この事実は、なんだか悩ましい話であり、かつ将来の働き手がいなくなると考えられている農業界においては、わりと厳しい話だなとも思いました。

 

象徴的な事例として、とある農家さん(以降Aさん)とお会いしていた際のエピソードをご紹介します。

Aさんと話をしていると、突然Aさんの電話が鳴り出しました。

緊迫していそうな状況が話しぶりからも伝わってきます。電話が終わった際に、思わずなにがあったのか尋ねたところ

「知り合いの農場で研修生が逃げ出したってさ!」

異国に研修にきたのに逃げ出すって、その人の立場になって考えると、まぁ、なんだかなぁという話です。

もちろん、そのような事件がいつも発生しているわけではなく、ごく稀にある事態とのことでしたが、慣れない環境での重労働に嫌気がさす人がいてもおかしくありません。それだけキツイ仕事であるということなのでしょうね。

 

差し迫る雇用問題

話は変わり、とある法人さんから伺った話です。そちらの法人さんでは意欲的に耕作面積を増やしていきたいと考えているものの、一番のネックが雇用問題とのことでした。

地域で採用募集をかけても雇用できないため、なんと担当者の方が某東南アジアの国にまで出向き、現地で雇用して日本に連れて帰ってきているそうです。

もちろん、雇用が難しいのは農業だけでなく、サービス業であったり、様々な業界で問題となっていますが、有能なエンジニアを雇用しに海外に出向く話は聞いたことがありましたが、農業のなかで、かつ彼等が担うのは単純作業という、言葉を悪く表現すれば、”誰でもできるような仕事”を担っていただく人を見つけるために、海外にまで行くんだという話は、なかなかのインパクトがありました。

 

雇用問題の解決の担い手

解決の担い手は、収穫ロボットを開発している我々です(笑)

だけでは身も蓋もないので、個人的な意見をせっかくなので簡単にまとめます。

数年前から、AIやロボットによってなくなる仕事。なくなる業種があるといった話が多く出ています。実際になくなっていく仕事は増え続けるでしょうし、職がなくなって困る方も出てきてしまうでしょう。

一方で、早くなくなった方が良い仕事があると考えています。例えば、前述してきたような人が雇えなくて困っていたり、雇われた側も逃げ出したくなる現場があります。

その反面、そういった苦しい現場で働いてくださる方がいるからこそ、我々は普段食べるものに困らず、必要な栄養素を美味しく取り込むことができている事実です。

極論、全員がキツイ労働現場から逃げ出したら、成り立たなくなるわけです。

 

といった世界を、いち早く変えられれば良いなと考えています。

多くの人はキツイ仕事をやりたくてしているわけではないはずです。ビジネスとして、明日の糧を得るために身を粉にして働いている方が多くいるけど、本当はキツイ思いがなるべく少なければ少ないほど良いはずです。

これまでにも30代で腰を痛めている農家さん達をたくさん見てきました。ここの痛みを解消したい。

だからこそ、我々はロボット化でありAI化によって、担い手の不足を解消することが喫緊の課題であると考え、解決すべくアプローチしています。仮にキツイ作業をロボットが代替できれば、外国から来る研修生も、もっと美味しく野菜を作るためのノウハウや、単位面積当たりの収量を増やすノウハウを学べるようになるかもしれません。

 

日本で作られる野菜は美味しいと評判ですし、実際に食べててそう思います。せっかく外国から研修に来るなら、単純作業に追われるばかりではなく、そういったクオリティの向上に繋がるようなノウハウを習得する時間を今よりも多く割ければ、皆がハッピーになる気がします。

世の中の辛い労働をロボットが代替してくれる世界は、きっと今よりも良い世界になる。そう信じています。

◯仲間大絶賛募集中です!


農業用ロボットの開発を始めようと思ってから今に至るまで〜8〜

前回まではこちら

農業用ロボットの開発を始めようと思ってから今に至るまで〜7〜

助成金を狙っていく上で、雑草の除草よりも、アスパラガスの収穫ロボットの方が筋が良いということが分かり、とにかくアスパラガスの生産者の方々に会うべく、可能な限りさまざまなルートからアポを取り付けました。

そして、実際にお逢いしていただいた農家さんから様々な気付きをいただきます。

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農業用ロボットの開発を始めようと思ってから今に至るまで

収穫ロボットの開発を進めていますが、「なんでやろうと思ったの?」と聞かれることが結構ありますので、せっかくなのでblogでまとめてみようかと思います。

ハードウェアやってみたいけど、一切知識がない状態からどうやってやれるのか。といっても、現段階ではまだプロトが作れていない状況なので、経過報告です。

それでも、なにかの参考になるかもと考え、まとめていきます。

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