農業用ロボットの開発を始めようと思ってから今に至るまで〜5〜
前回はこちら
農業用ロボットの開発を始めようと思ってから今に至るまで〜4〜
雑草を摘むためのロボットアームの開発ができる先生と出逢えた。というのが前回の話でした。
そして、ここから大きなキッカケを得るのですが、その前提の話を。
inahoの本社がある鎌倉にてカマコンという地域活動に携わっています。月に1度の定例会を開催しており、毎回100人くらい集まります。プレゼンター5人がそれぞれ「鎌倉で◯◯をしたい」「鎌倉を◯◯な街に」といったプレゼンを行い、その中で出される課題に対して、参加者全員がそれぞれ興味を持ったプレゼンに対してアイデアをブレストします。
最後に各プレゼン毎にアイデアを一つ発表し、自分もそのアイデアに乗っかっても良いと思った方は挙手をして、プロジェクトチームが生まれて、プロジェクトが走りだす。そんなことを毎月やっているのですが、この活動を各地方でも開催したいと要望があり、盛岡、高山、丹波、松山、氷見、白馬、福岡などなど。全国に出向いて定例会開催のお手伝いをさせてもらってもいます。
カマコン カマコンバレーの中の人になって分かった上手くいっている理由
福岡ではフクコンというイベントを開催しており、今でも定期的に参加させてもらっています。そのフクコン第2回目のときです。懇親会のときに真吾さんという方から、
「ひっしー、この方は農業やっている方だから紹介するね」
と無茶振り的にご紹介していただいたのが、佐賀の農家さんでした。懇親会の終わり間際でしたが(笑)でも、いつも農業ロボット作っていると言っていたからこそ、ご紹介いただけたのだと思います。有難いことです。
そして、たたみかけるように、雑草を摘み取るロボットを開発しようと考えていること。そうすることで、農家さんがより自分たちが美味しい野菜を作るために時間を割ける未来を作りたい。そういったことを伝えると、先方から予期せぬ返答が返ってきました。
「雑草も良いですけど、うちのアスパラガスなんとかしてもらえないですかね」
ん??一体なんのことなんだろう。
「アスパラガスの収穫って大変なんですよ。ロボットでやってくれたら嬉しいです」
また新たな要望が飛んできました。
アスパラガスの大変さ
アスパラガスの収穫は大変らしい。人生で初めて知ったトリビアでしたが、いまいち実感できません。そもそもアスパラガスの圃場がどういったものかすらサッパリ分かりません。
ということで、行ってきました。佐賀へ。
やっぱり現地を見ないと分からないものです。
そもそも後ろに見えているのがアスパラガスだと信じられますでしょうか?
ジャングルのようにうごめく葉たち。
まるで竹林かのようです。
ちなみにこのとき伺ったのが11月で既にアスパラガスの収穫は終わっていました。では、この木のようなものはなにか?って話になるのですが、この木もアスパラガスなのです。
普段食べているアスパラガスを伸ばしっぱなしにすると、このような高さまで成長し葉もつけます。ちなみに120cmまで伸ばすことが多いそうです。
簡単にアスパラガスの生育を説明すると、アスパラガスはユリ科の植物で鱗芽と呼ばれる根の部分に力が蓄えられています。春の時期は土からにょきにょき出てくるものをドンドン刈り取ります。
その後、夏に向けて選りすぐったアスパラガスを木に成長させます。そうすると写真のように葉をつけるので、光合成をし、その力を根に回して、また木の周りからアスパラガスがドンドン出てきて刈り取りまくるそうです。
そんな生育なんて知らずに食べていましたが、知ると面白いものですよね。ちなみに、地域によって生育方法が違うので、全てのアスパラガスが同様の管理方法ではありません。上記はビニルハウスで生育する手法の一つです。北海道で路地栽培の場合は、収穫時期も短くなったりします。
農家さんが大変なのが収穫作業。地域によって26cmとか27cmとか出荷制限があるのですが、その長さに揃えて出荷するわけです。つまり、適した長さのものか判別して取る必要があります。
また、不必要に30cmとか35cmまで伸ばしても、出荷できるのは26cmなので余分に伸ばした分は無駄なエネルギーを費やすことになるので、なるべく素早く刈り取りたいそうです。しかし、夏場になると1日10cmも伸びることがあるアスパラガス。農家さんは休みを取ることなんて出来るはずもなく、毎日ひたすら収穫しているそうです。
もちろん炎天下の中、昼間のビニルハウス内は40度を超えるような環境なので収穫作業ができるわけもなく、早朝と夕方に腰をかがめて収穫し続けているそうです。
伺った方は30代半ばの方ですが、その若さでも腰を痛めてしまっているそうです。そして前述した通り、毎日伸び続けるので休むことができない。これは大変だし、その作業はロボットができるのであればできた方が良い。そして、今まで考えてきた雑草を取るロボットと使える共通項がとてもあることが分かりました。
雑草ロボットの転用
雑草を取るロボットで基本的な規格は以下の内容です。
1,自律走行で圃場内を動く
2,野菜か雑草かをAIを用いた画像認識の技術で見極める
3,雑草と認識したらロボットアームで摘み取る
これをアスパラガスの収穫ロボットで考えると下記になります。
1,自律走行で圃場内を動く
2,収穫基準にあるかどうかAIを用いた画像認識の技術で見極める
3,収穫対象と認識したらロボットアームで収穫する
まさに今まで検討してきたものが、認識する対象や、ロボットアームの先端の機構は変わるものの、雑草ロボットの延長線上で開発できる感じがします。
雑草を取れるロボットを開発しようと思い立ったら、数ヶ月で他の転用方法が見つかってしまいました。そもそもは、カマコンの流れで福岡まで行ってフクコンを手伝っていたのですが、本業でこのような展開に結びつくなんて一切想像もしていませんでした。
ホント世の中なにが起きるか分かりません。面白いものです。目の前に出てくるものは、目の前のなにかと直接結びつくかどうかなんて考えず、どう繋がるか分からないけど、いろいろと遠くに投げておけば、きっと予想もつかない形で繋がっていくのだと思います。
次は具現化するために必要な資金対策へと向かいます。