【Blog】アスパラガス農家さんの天敵!害虫「スリップス」対策

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私たちinahoは現在、自動野菜収穫ロボットを開発しており、2019年9月にアスパラガス対応ロボットを実用化しました。ロボットを農家さんに提供するだけではなく、私たちが大事にしていることは「農家さんとともに成長する」ということ。

そこで、このBLOGコーナーでもアスパラガス農家さんにとって有益な情報をお伝えすべく、今回は農家さんを悩ませる病害虫「スリップス」対策について、ご紹介します!

 

スリップスとは?

アスパラガス農家さんにとって、非常に厄介な害虫・スリップスは、日本に4科150種が生息していると言われています。アスパラガスに被害を加える一般的なスリップスは、ネギアザミウマと呼ばれる種で、若茎食害による秀品率の低下を引き起こします。

 

ネギアザミウマ(「あいち病害虫情報」より)

 

◆生態

 ①成虫の寿命は20日~45日※生育環境(温度)により異なる
 ②ネギアザミウマは、交尾せずに増殖も可能
 ・産卵管を葉に突き刺し、細胞内に1つずつ卵を産む
 ・一生で200個前後の卵を産む
 ③完全変態で成長
 ・卵(葉細胞内) → 幼虫 → 蛹(土中) → 成虫
 ・卵から成虫まで14日~17日程度
 ④1年間に5回~12回の発生を繰り返す
 ⑤短期間で世代交代を繰り返すため、他の虫よりも抵抗性の発達スピードが速い
 ・暖かいと繁殖スピードが速く、ハウスでは年中発生
 ⑥10℃以下もしくは33℃以上になると、繁殖スピードが落ちる
 ⑦成虫のまま越冬可能。
 ⑧卵、蛹時には、物理的に農薬が効かない。

 

◆特徴

 ①体長1~2mmの小さな昆虫
 ②成虫は体が細長く、種によって異なるが多くは黄色、褐色、黒褐色
 ③幼虫、成虫ともに尖った口吻(こうふん)を葉に突き刺して汁を吸い食害痕を残し、秀品率を下げる
 ④作物によっては、ウイルスを媒介する虫となり、幼虫期に保毒したウイルスを飛び回りながら、ウイルスをまき散らす
 ⑤羽を有しているが飛行能力は低く、主に風を利用して飛ぶ
 ⑥ペタペタ農薬、気門封鎖剤も羽根を利用して体を守るため、効果が少ない
 ⑦狭いところを好むため、農薬が利きにくい(ハカマに隠れている事が多い)
 ⑧蛹になる場合は土に潜るため、農薬が利きにくい
 ⑨黄色、青色に集まる性質がある
 ⑩乾燥を好み、湿度を嫌う
 ⑪4月〜10月に活動し、梅雨明けから8月に大繁殖

 

ネギアザミウマ(「あいち病害虫情報」より)

 

秀品率を下げ、ウィルスを撒き散らし、さらに農薬が効きにくい「スリップス」。この厄介な病害虫に対して、どのように対策すべきか?その具体的な方法について、次の章でご紹介します。

 

IPM防除とは?

アスパラガス農家さんにとって、非常に厄介なスリップス。その効果的な対策方法として「IPM防除」と呼ばれるものがあります。「IPM防除」とは、総合的病害虫・雑草防除(Integrated Pest Management)の略で、耕種的防除や生物的防除、物理的防除、化学的防除を組み合わせた防除方法です。

 

IPM防除(「中央西農業振興センター 高知農業改良普及所」より)

 

◆耕種的防除(生態的防除)

病害虫・雑草が常発しないように、圃場管理、作付け、肥培管理、輪作、植生管理などを行います。

 

1.雑草の管理による防除

アザミウマがウイルスを保毒する雑草として、主に下記の種類が存在し、これらが生育しないように管理することが重要です。
ホトケノザ / ハコベ / オランダミミナグサ / カタバミ
・特に、アザミウマにとって親木などの隠れ蓑がない春芽環境は除草が重要
・ネギアザミウマの場合、ウイルス媒介する可能性は低い
・アスパラガスでも被害が増えてきているミナミキイロアザミウマの場合は、上記雑草からアスパラガスへウイルスを媒介する恐れがある

 

2.大量潅水

大量潅水を行うことで乾燥を防ぎ、スリップスの増殖を抑える効果があります。

 

ミナミキイロアザミウマ(「あいち病害虫情報」より)

 

◆生物的防除

スリップスにとって天敵となる昆虫や微生物農薬などを用いて対策を講じます。

 

1.タバコカスミカメ・タイリクヒメハナカメムシ

スリップス類、コナジラミ類を捕食してくれる捕食性天敵を発生させます。
①タバコカスミカメのバンカープランツ
 →バーベナ / クレオメ / ゴマ

タバコカスミカメ(「農林水産省」より」

 

②タイリクヒメハナカメムシのバンカープランツ
 →マリーゴールド / バジル / ブルーサルビア

※黄色の花はスリップスが寄りやすい色のため、早めに摘雷することをお勧めします!

 

タイリクヒメハナカメムシ(「農研機構 中央農業研究センター」より)

 

2.スワルスキーカブリダニ剤

有機栽培・特別栽培農産物でも使用可能な天敵殺虫剤を散布します。

 

◆物理的防除

 雨よけハウス、防虫ネット、粘着紙、光反射マルチ、太陽光消毒などを用いて対策を講じます。

1.粘着紙

スリップスが好む色でおびき寄せ捕殺します。
・ネギアザミウマ : 青・黄・白
・ミナミキイロアザミウマ : 青緑・緑

※春は保温開始日に設置することで春芽のスリップス被害を素早く抑えることが出来ます。
※畝上から50cmくらいの高さに設置

 

粘着紙(「島原雲仙農業協同組合」より)

 

2.太陽光消毒

 42℃以上の高温で死滅させます。
 ・10分程度でも効果あり
 ・7日以上置いて2回処理(卵や蛹だったスリップス対策)

 ※栽培終了後(10月後半)でも可能

 

3.UVカットフィルム(紫外線カットフィルム)

スリップスは紫外線を感知して飛行するため、紫外線をカットすることで、ハウス外からの侵入数を減らします。

 

4.赤色防虫ネット利用(効力 0.6mm目合い > 0.8mm目合い)

スリップスなどの昆虫は赤色を視認することが出来ず、赤色ネット越しの作物を認識することができない。

※風通しが悪くなるため、別途繫茂を抑える等の風通し対策と合わせて行って下さい。

 

◆化学的防除

化学農薬(殺虫剤、殺菌剤、除草剤など)を用いて対策を講じます。

 

1.系列別で農薬散布のローテーションを立てる。

スリップスは抵抗性の発達スピードが早いため、同じ系統を使い回さないことが重要です。

 

農家さんにとって、害虫による被害は大きな課題の一つです。

現在取り組まれている対策に加えて、今回ご紹介した対策を取り入れることにより、秀品率や利益向上につながれば幸いです!